妊婦さまへ

 妊娠中にウイルスや細菌、寄生虫などに母体が感染すると、お母さんからお腹の赤ちゃんにうつってしまい、赤ちゃんが何らかの症状をもって生まれてくることがあります。そのようなことが起こらないように、お母さんは『感染しないように予防すること』が大切です。

トキソプラズマから赤ちゃんを守るために 

トキソプラズマ 

 トキソプラズマは、ネコや牛、豚、馬などの動物に寄生する原虫です。人に感染するのは、感染した動物の肉を生や十分に加熱せずに食べる、土いじりをする、感染したネコのふんを触るなどの経路で感染します。妊娠して初めて感染すると、赤ちゃんの脳や目に障害が出る可能性があります。

予防は??

  • ①肉は十分加熱して食べる。生肉・生ハムを避ける。
  • ②土いじりをする時は、手袋をして石鹸でしっかり手洗いをする。
  • ③包丁やまな板は、生肉用と野菜用に分ける。
  • ④ネコの世話はできれば家族に任せる。

サイトメガロから赤ちゃんを守るために 

サイトメガロ 

 サイトメガロは、人の唾液や尿に多く含まれており、通常は子どもの頃に友達や兄弟から感染することが多いと言われています。どんな年齢でも感染することはありますが、健康であれば症状がでることはほとんどありません。しかし、妊娠して初めてこのウイルスに感染すると、赤ちゃんが難聴や脳障害などを引き起こす可能性があります。妊娠では、2人目以降の子どもを妊娠した時が多く、上の子どもの世話をして感染するパターンがほとんどといわれており、最近は、免疫を持たない女性が増えています。

予防は??

  • ①食べ物、飲み物は子どもとは別にして、同じ箸やスプーンなどを使わない。
  • ②妊娠中の性行為は、コンドームを使いましょう。
  • ③石鹸でしっかり手洗いをする。

※特に、オムツ交換、子どもの食事、鼻水やよだれの処理、おもちゃを触った後は、念入りに手洗いしましょう。

妊娠中の血液検査について 

梅毒血清反応

 最近では少なくなった病気ですが、新しいもの、未治療のものほど妊娠・分娩及び胎児に影響がありますので、なるべく早い時期に検査をして、もし感染している場合は、早期に治療する必要があります。

HB抗原(B型肝炎ウイルス)

 HB抗原はB型肝炎や肝硬変及び肺癌の原因になるといわれています。特にHBe抗原陽性の場合には胎児も分娩時に母親から感染を受け新生時期に脳障害をあらわす場合があり、時にキャリアといって一生肝炎ウイルス保菌者になることがあります。

HCV抗体(C型肝炎ウイルス)

 肝炎ウイルスによっておこる慢性肝炎の半数以上はC型肝炎ウイルスであり、肝硬変や肺癌の原因になるといわれています。HCV抗体陽性の場合、稀に胎児も母親から感染を受け、肝障害がおこることもありますので、これからもチェックしておきましょう。

エイズ検査

 妊婦検査には、児への感染予防のため、梅毒・ウイルス性肝炎などの検査を致します。母子感染で、もう一つ注意しなければならないものにエイズがあります。エイズ妊娠の分娩も十分に管理されると30%の母子感染を2%に低下させることが可能となります。

風疹抗体検査

 風疹に対する免疫を持たない女性が妊娠中、特に妊娠初期に風疹に罹患すると、出生児に先天性風疹症候群(CRS)を発症することがあります。CRSは感音性難聴、眼症状(白内障、縁内障など)、先天性心疾患(動脈管開存症、肺動脈狭窄、心房中隔欠損症、心室中隔欠損症など)の3微候の他に、子宮内胎児発育不全、肝脾腫、精神発達遅滞などさまざまな症状を示します。妊娠中の感染時期が早いほどCRS発症リスクが高く、感染防止する必要があります。

風疹の抗体が(-)又は抗体が低めですね。と言われた妊婦さんへ

 当院では対応として産後1ヶ月健診までの予防接種をお勧めしています。時に軽度の倦怠感や関節の痛みを感じることがありますが問題ありません。妊娠中でなければ、産褥中・授乳中であっても予防接種は可能です。

御主人への対応方法について

 妊娠中は風疹に感染しないようにする為に、当院では御主人の検査をお勧めしています。

今までにかかったかどうか分からない。

風疹には、かかっていない。

という方には早めに検査を行い、早期に予防接種をお勧めします。

※市町村によって申請すると、費用の助成制度があります。お住まいの市町村にお問い合わせ下さい。

血液型

 ABO式とRh式について調べます。これは赤ちゃんの重症黄疸とも関係があり、又分娩時の出血にも備えて調べておきます。

不規則抗体検査

 不規則抗体は、生まれつき自然に持っている場合と輸血や妊娠で免疫されて作られる場合があります。すべての不規則抗体が溶血性輸血副作用や新生児溶血性疾患を引き起こすわけではありませんが、不規則抗体の有無を事前に確認することが大切です。

貧血の検査

 妊娠中の貧血は胎児の発育にも大いに関係しますし、貧血があるとお産の時出血が多くなったり、輸血の心配をしなければなりませんので妊娠初期から検査しておく必要があります。

HTLV1-検査

 母乳を通して赤ちゃんに感染するため、検査が必要です。感染が認められた時は、母乳を飲ませるかの検討が必要となります。

妊娠糖尿病スクリーニング検査

 妊娠中に初めて発見、または発症した糖代謝異常のことをいいます。正常な妊婦さんはインスリンを多く分泌して高血糖になるのを防いでいます。しかし、インスリンの分泌が不足している妊婦さんは、高血糖となり、赤ちゃんに移行することで巨大児になります。出生後、赤ちゃんは低血糖を起こしてしまいます。このような危険な状態を予防するために、検査を行い、必要時血糖コントロールします。

妊娠中に気をつけたい症状 

 むくみ、がんこな便秘、性器出血、普段と違うおりもの、腹痛、強い頭痛、発熱、つわりで衰弱がひどい、下痢、イライラ、めまい、動悸が激しいはきけ・嘔吐、胃痛、今まであった胎動を感じなくなったとき※上のような症状が出たら早くご相談ください!

母子健康カード 

 母子健康カード(母子健康管理指導事項連絡カード)は、主治医等が行った指導事項の内容を仕事を持つ妊産婦から事業主へ伝えるのに役立つカードです。※診断書と同じ役割があります。

働いている妊婦さんへ 

 会社に申し出れば、勤務時間内に妊婦健診を受診するための時間をとることができます。(男女雇 用機会均等法第12条)★詳しくは、お近くの都道府県労働局雇用均等室にご相談下さい。